DOLLY
- 藤本壮介『建築が生まれるとき』の紹介
- 現代とは情報と環境の時代である
- 未来の建築のための五つの問い
本書では、建築家・藤本壮介の「建築の思考」をのぞき見ることができます。
プロジェクトやコンペ案、その他にも藤本氏の好きな建築や実際に訪れた建築を通して、建築思想がどのように形成されていったのかを知ることができます。
世界の第一線で活躍している日本を代表する建築家の著書をぜひ読んでみてください。
※この記事は 3 分ほどで読めます。3 分後には、本書に興味が湧いているはずです。
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藤本壮介『建築が生まれるとき』の紹介
建築家・藤本壮介の『建築が生まれるとき』は、2010 年 8 月に初版が発刊されました。
本書は二部構成で、1 部と 2 部ではそれぞれ藤本氏が下記の内容について語っています。
- 1 部・・・手がけたプロジェクトやコンペ、建築にまつわる思考について
- 2 部・・・好きな建築や実際に訪れた建築について、およびインタビュー
書き下ろしではなく、1998 年から 2009 年における建築雑誌への寄稿をまとめたものなので、同じキーワードが何度も別の文脈の中で出てきます。
藤本氏の建築思想がどのように形成されていったのかをプロットしている書籍とも言えるのではないでしょうか?
本書では、建築家・藤本壮介が、どのようなコンセプトで建築を設計していて、実際の作品がどのような空間を持つのかを知ることができます。
また、藤本氏の建築のイマジネーションの背景にあるものを、好きな建築や訪れた建築について語る言葉から感じられるはずです。
現代とは情報と環境の時代である
著者の藤本壮介氏は、情報と環境を次のように定義しています。
- 情報・・・新しい単純さ
- 環境・・・コントロールできない他者
環境についてはすんなりと納得できると思いますが、情報を「新しい単純さ」としていることに違和感を覚えた方もいるのではないでしょうか?
現代において、情報は複雑なものであるイメージがあるかと思います。(私はそのようなイメージを持っています。)
それなのに、あえて「新しい単純さ」としているのは、藤本氏が情報社会である現代に何か新しいものを見出そうとしている姿勢のように思えます。
藤本氏が語る、未来の建築としての「未来の森(=森的なるもの)」は、ある種の複雑さと単純さをそなえているとしています
未来の森としての建築が示唆するのは、いかに自然のような複雑で多様なものを、直接的な模倣ではなく、人間がつくることができるのか、という問いである。(中略)単に自然に帰るのではなく、自然の多様性を再構築すること。だから未来は原初的である。僕はそれを「プリミティブ・フューチャー」と名づけた。原初的な未来における新しい建築。それは複雑さと不確定性の建築である。
出典:建築が生まれるとき 11ページ
建築において、環境は「コントロールできないもの」だと経験的に知っていて、「情報」というファクターについては執筆時点では答えを探している状態だったのかもしれません。
未来の建築のための五つの問い
藤本氏は、「現代とは情報(=新しい単純さ)と環境(=コントロールできない他者)の時代である」としたうえで、未来の建築について考えます。
そうして未来を考える。ある新しい単純さを備えていて、それでいて自分ではコントロールできない他者的な要因を許容するような多様な場所を持つ建築とはどういうものだろうか。僕はそれを「未来の森」のような場所だと考えている。(中略)森の直接的な模倣ではなく、森というものの持っている質的なもの、「森的なるもの」に可能性を感じている。
出典:建築が生まれるとき 9ページ
未来の建築のための五つの問い
- 場所としての建築
- 不自由さの建築
- 形のない建築
- 部分の建築
- あいだの建築
場所としての建築
建築はそもそも場所なのだから、場所としての建築というのは変な言い方なのかもしれない。ここで「場」といったのは、「機械・道具」としての建築に替わるものとしてである。機能する機械ではなく、様々な密度を持った、居るための場所である。それは単なる空間的な場所ではなく、なにか、きっかけ、手掛かり、のようなものに満ちている。ランドスケープ。
出典:建築が生まれるとき 10ページ
不自由さの建築
それは何もない不自由さではなく、人間にとっての「自然」のような、行動を喚起する、快い異物の不自由さである。そのとき不自由さは可能性となる。
出典:建築が生まれるとき 10ページ
形のない建築
これは単に形態の問題ではなく、建築が機能的にも存在としても自律していないことを指している。不完全性の持つ可能性。都市・不完全さとは、許容力であり、コミュニケーションのきっかけである。
出典:建築が生まれるとき 10ページ
部分の建築
全体からではなく、局所的な秩序からデザインすることで、建築全体の中に、曖昧さや不完全性と、秩序を同居させる方法である。複雑なものを複雑なまま建築化すること。最も複雑で曖昧なものが、最も単純であるということ。
出典:建築が生まれるとき 10ページ
あいだの建築
そのような部分からの建築においては、分解され還元される部品は存在せず、むしろ部分と部分の関係性のみが存在する。空間それ自体よりも、空間と空間の関係性、空間と周辺との関係性が重要になってくる。「建築はひとつの空間ではない」。それ自体は存在せずとも、何かと何かをつなぐ「あいだ」が建築として成立する。関係性の建築には予期しない他者を許容する力がある。
出典:建築が生まれるとき 11ページ
この五つの特徴を「未来の建築のための五つの問い」と呼ぶことにして、「原則」ではなく「問い」としているところに、藤本氏の建築家としてのスタンスが現れているのではないか。
「近代建築の五原則」や「住宅は住むための機械」などを想起させるあたり、無自覚かもしれないがコルビュジエを意識しているように思える。
おわりに
- 本書では、建築家・藤本壮介が、どのようなコンセプトで建築を設計していて、実際の作品がどのような空間を持つのかを知ることができる
- 現代とは、情報(=新しい単純さ)と環境(コントロールできない他者)の時代である
- 新しい単純さを備え、コントロールできない他者を許容するような建築の特徴は、「未来の建築のための五つの問い」に見ることができる
合わせておすすめしたい藤本壮介さんの本は、『原初的な未来の建築』と『藤本壮介読本』です。
本書と合わせて読むと、建築家・藤本壮介の「建築の思考」の根っこにあるものを、あますことなく知ることができます。
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