建築士ブロガーの DOLLY です。
日本では3種類の建築士資格があることは知っていますか?
「一級建築士」、「二級建築士」、「木造建築士」の3つです。
建築士の資格に興味がある方は、それぞれの資格のちがいについて調べたことがあるかもしれません。
ひと言でちがいを説明すると、「業務範囲の広さ」です。
3種類の資格の定義
建築士法では、次のように定義されています。
「一級建築士」とは、国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
「二級建築士」とは、都道府県知事の免許を受け、二級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
「木造建築士」とは、都道府県知事の免許を受け、木造建築士の名称を用いて、木造の建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
3種類の資格のちがいは、「だれに免許を与えてもらうか」ということが要点になります。
「一級建築士」は国土交通大臣(国交省のトップ)の免許を受けるので、日本でつくる建築物はどんな規模であっても設計することが認められています。
(「構造設計」と「設備設計」については、一定の条件にあてはまる場合、さらに資格が必要になりますが、それについては別の記事で説明します。)
「二級建築士」と「木造建築士」は都道府県知事の免許を受けるので、設計できる建築物の条件が限られます。
免許を与えるのが、「国」と「都道府県」でスケールが大きくちがうので、直感的にイメージしやすいと思います。
「気になってる建築士に家づくりの相談を頼みたいけど、その人の設計事務所は大阪にあって、マイホーム用の土地は滋賀にあるんだよなぁ…」
都道府県知事の免許を受けていると聞くと、こういう場合に不安になるかもしれませんが、心配は要りません。
大阪府知事の免許を受けてる建築士でも、滋賀県の家を設計することはできます。
もちろん、北海道であっても沖縄であっても大丈夫です。
免許を受けた都道府県じゃなくても、建築士の資格は有効
業務範囲のちがい
それぞれの資格で取りあつかえる業務範囲についても、建築士法で定められています。
- 一級建築士でなければできない設計又は工事監理
- 一級建築士又は二級建築士でなければできない設計又は工事監理
- 一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければできない設計又は工事監理
法律の文章をそのまま抜きだすと、ものすごくわかりづらいので、建築士試験を実施している「公益財団法人 建築技術教育普及センター」のホームページにまとめてある表を引用させてもらいます。
この表で覚えておいてほしいのは、「高さ13m又は軒高9m」がひとつ大きな区切りになっていることです。
表をみてもらったらわかるように、高さ13m又は軒高9mを超えるものを建てる時には、構造に関わらず「一級建築士」でなければ設計できません。
上の表には、ひとつでおもしろいポイントがあります。
それは、建築士の資格をもっていなくても、設計や工事監理をしてもいい建物があるということです。
たとえば、木造2階建てで面積が100㎡以下であれば、だれでも設計できます。
木造建築士は、木造建築の専門家?
最後に、木造建築士についてすこし触れておきます。
木造建築士は、木造の建築物に限り、設計や工事監理をすることを許されています。
しかし、3階建て以上の建築物に関しては、木造であっても設計と工事監理はできません。
あなたの家から駅までのあいだで見かける住宅を、できるかぎり思い描いてください。
その中には3階建ての家もたくさんあるのではないでしょうか?
それらの住宅は、一級建築士か二級建築士でなければ設計できません。
つまり、一般的な住宅地では、木造建築士が活躍する場が限られているのです。
そういう理由があって、木造建築士の多くは田舎にいると聞いたことがあります。
田舎では、平屋(1階)建てをよく目にしますし、土地が広いので豪邸であっても2階建てでおさまっていることのほうが多いです。
木造建築士というくらいだから、「木造建築の専門家」だと思っている方もいるかもしれません。
これにはちょっとした語弊があります。
「業務範囲のちがい」で使用した表をみてもらえばわかりますが、「木造建築の専門家」だからではなく、「木造建築しか設計できない」から木造建築士とよばれているのです。
もちろん、木造建築士の中には「木造建築の専門家」とよぶべきほどに詳しい方もいますが、それは「資格」をもっているからではなく、努力をして身につけた「資質」があるからです。
つまり、一級・二級・木造に関わらず、建築士個人としてスペシャリストであるかどうかが重要なところなのです。
木造建築士が、「木造建築の専門家」という認識は誤り
おわりに
おさらいですが、一級・二級・木造、それぞれの建築士資格のちがいは、設計できる建物の規模、つまり「業務範囲の広さ」です。
あと、建築士個人としてスペシャリストであるかどうかというのは、建築の仕事をしていくうえで一番たいせつなことであると言っても過言ではないので、心に留めておいてください。
それは、マイホームの設計を依頼するときにもおなじくたいせつなポイントになります。
「一級建築士をもっているから安心」ではなく、その建築士の実績(過去の物件など)をよくみるように心がけておきましょう。
- 一級・二級・木造の3種類の建築士資格のちがいは「業務範囲の広さ」
- 木造建築士が「木造建築の専門家」とは限らない
- たいせつなのは、建築士個人としてスペシャリストであるかどうか