建築士ブロガーの DOLLY です。
建築物の設計から竣工(建物の完成)までには、さまざまな立場の人たちが関わり合います。
一般的には、大きく3つに分けられます。
- 建築主
- 設計者
- 工事施工者
これらは建築基準法でも定められいる用語で、建築物の設計・施工にたずさわる人は3つのどれかの立場にあてはまります。
あなたがどの立場で、どういう風に関係者と建築物をつくりあげていくのかを理解しておきましょう。
まずはそれぞれの役割を理解しよう
建築基準法では、次のように定義されています。
- 建築主 建築物に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
- 設計者 その者の責任において、設計図書を作成した者をいい、(中略)
- 工事施工者 建築物、(中略)に関する工事の請負人又は請負契約によらないで自らこれらの工事をする者をいう。
法律の条文をそのまま転記しているので、小難しい表現になっていますが、それぞれの役割をめちゃくちゃ簡単に言うと次のようになります。(「請負契約によらないで〜」は、ややこしくなるので今回は考慮しません。)
- 建築主 → おかねを出す
- 設計者 → 設計する
- 施工者 → 建築物をつくる
基本的な三者の関係性
基本的な三者の関係性は、上の図のようになります。
この図のような関係性が基本になります。
(「設計者」の下に、小さく「工事監理者」と書いていますが、この記事では無視していただいて構いません。)
建築物の設計から竣工(建物の完成)までを上図をもとに、文章でざっくりと説明すると次のようになります。
- 建築主は建築物の設計を、設計者に依頼する
- 設計者は設計図書をつくり、建築主からおかねをもらう
- 建築主は建築物の施工(工事)を、施工者に依頼する
- 施工者は工事に際して、設計図書でわからないことの「確認」や工事の進捗状況の「伝達」などを行い、設計者はそれらの事項を「監理」する
- 施工者は建築物をを完成させて、建築主からおかねをもらう
文章で説明するとわかりづらいので、図で覚えておいてください。
もうひとつ覚えておいてほしいのは、契約関係の説明にあたるリストの①と③の内容です。
このことからわかるように、設計者と施工者のあいだに契約関係はありません。
実際の例をあげておきます。
- マイホームを建てたい個人が、設計事務所に依頼して、工務店が建てる
- 分譲用マンションを建てたいデベロッパーが、設計事務所に依頼して、ゼネコンが建てる
他によくある3パターン
ハウスメーカー型
基本的な関係性は、三者がばらばらの立場で成り立っていました。
しかし、上の図では「設計者」と「施工者」がひとつの円になっています。
このパターンは、設計・施工が「ハウスメーカー」であることが多いです。
『住友林業』や『積水ハウス』などをイメージしてください。
マイホームを建てるときによくある選択肢なので、想像しやすいと思います。
- マイホームを建てたい個人が、ハウスメーカーに依頼して、ハウスメーカーの施工部門が建てる
デベロッパー型
今度は、「建築主」と「施工者」がひとつの円になっています。
想定されるのは、建築主が「デベロッパー」である場合です。
建築物をつくる「施工部門」はもっているけれど、「設計部門」をもっていない会社のときに、ありえるパターンです。
- 分譲用の戸建て住宅を建てたいデベロッパーが、設計事務所に依頼して、デベロッパーの施工部門が建てる
工務店型
最後のひとつは、「建築主」と「設計者」と「施工者」がすべておなじ円の中にいます。
これは、住宅を販売している「工務店」などで考えられます。
社内に「設計部門」があり、住宅の売買も行っている工務店であれば、自社でおかねを出して、設計図書をつくり、販売用の住宅を建てることができます。
- 住宅の販売をしている工務店が、自社の設計部門で設計した住宅を、自社の施工部門で建てる
おわりに
この記事で説明した4パターンが代表的なものになります。
マイホームを建てようとしている方は、基本とハウスメーカー型を理解していると十分です。
建築関係の仕事に就いている方や、将来は建築の仕事をしたいと考えている方は、すべてのパターンを覚えておいて損はしないので、あたまの片隅に入れておいてください。
- 建築主は「おかね」を出して、設計者は「設計図書」をつくり、施工者は「建築物」をつくる
- 三者がばらばらなのが基本形
- 他のも「ハウスメーカー型」「デベロッパー型」「工務店型」がある