一級建築士がおすすめする建築の本まとめ【初級・中級・上級】

DOLLY

これまで読んできた建築の本から、おすすめの1冊を紹介します。

おすすめの建築本【初級編】

建築に興味を持ちはじめた方に手にとってほしい本を紹介しています。

イラストや図解があって分かりやすい・文章が多いけど読みやすい、「やさしい建築の本」がテーマです。

次のような建築の本が中心となっています。

  • 建築を学ぶための入門書
  • 建築家の思想にふれられるエッセイ
  • ビジュアルで楽しめる作品集

あなたは20世紀建築の三大巨匠を知っていますか?

  • ル・コルビュジエ
  • ミース・ファン・デル・ローエ
  • フランク・ロイド・ライト

この3人の建築哲学は、20世紀建築に大きな影響を及ぼしています。

写真がたくさん使われていてサクサク読めるので、近代建築の入門書として最適です。

20世紀のアートや建築、グラフィックデザインなどを語る上で外せない「バウハウス」についても学ぶことができます。


建築のみならず、家具、プロダクト、インテリア、都市という様々な領域で新たなデザインを生み出した、7人の建築家が取り上げられています。

  • フランク・ロイド・ライト
  • ミース・ファン・デル・ローエ
  • ル・コルビュジエ
  • ヘリット・トーマス・リートフェルト
  • アルヴァ・アールト
  • ジャン・プルーヴェ
  • アルネ・ヤコブセン

彼らの仕事から、建築デザインの基礎を学ぶことが本書のテーマです。

カラーイラストが多く文章が少ないのでサクッと読めるのに、建築デザイン(=建築計画)の大枠をとらえることができる良書です。

建築学部に入学したばかりの大学生、または建築学部に進学したい高校生におすすめします。


本書では、次のような人物像をターゲットにしています。

  • いま、住宅設計を学んでいる学生
  • 最近、住宅の設計実務を始めたばかりの人
  • これから、自宅を建てようと考えている方

実際に読んでみたところ、これらの人物像に当てはまる人なら、たしかに役に立つだろうという印象でした。

画期的なことが書かれている訳ではなく、住まいの基本についてやさしく解説されています。

序文に書かれている、「一つのゴールを示すのではなく、たくさんのスタート地点を並べたガイドブック」という表現がぴったりの住まいづくりの手引書です。


私が無意識のうちに目指していたのは、人々が目を瞠り、誰もが話題にせずにはいられない「特別なもの」ではなく、気張りもしないし、気取りもしない。背伸びもしないし、萎縮もしない。無理もしないし、無駄もしない。それでいてまっすぐに背筋の通った「普通のもの」でした。

中村好文(まえがきより)

中村好文さんは、私が憧れている建築家です。

まえがきに書かれているこの文章を読んで、心に響くものがあった方にはぜひ読んでもらいたいです。

中村さんが設計した住宅・別荘だけでなく、施主の方とのストーリーも垣間見えて、読んでいてほっこりします。



住宅建築家の中村好文さんが設計した「上総の家Ⅱ」についての本です。

特に興味を惹かれたのは設計術を紹介している第2章で、この小さな家に詰め込まれた設計の工夫が記されています。

中村好文さんの真骨頂は「自然体の建築」にあると思っているんですが、まさしくその様をのぞき見ることができます。

70㎡ほどの小さな家を舞台に紡がれてきた物語を味わうことができる1冊です。


この業界には“千三せんみつ”って言葉がある。
千の言葉の中に、真実はたった三つってことだ。
正直者がバカを見る。嘘ついてなんぼのイカレた世界・・・
それが不動産の営業だ。

出典:正直不動産 1巻

不動産営業マンを主人公にした異色の漫画で、「建物づくりの実際」に大きく影響する不動産業界のダークサイドを見せています。

この漫画だけで不動産業界を知ったつもりになるのはNGですが、一端を知るために漫画から入ってみるのもアリです。

おすすめの建築本【中級編】

すでに建築の勉強をしている方に手にとってほしい本を紹介しています。

知識を得るだけでなく考えさせられる、「1歩踏みこんだ建築の本」がテーマです。

次のような建築の本が中心となっています。

  • 建築の学びを深める専門書
  • 実務でも使える技術書
  • 建築の学びがある他分野の関連書籍


タンポポ・ハウスや高過庵で有名な藤森照信さんが、「建築とは何か」という根源的な問いへの考えを示しています。

15名の建築家からの質問状のコーナーでは、藤森さんの建築史家としての側面を知ることができます。

建築の基礎をひととおり学んだ方(建築学生なら2年目の方)に読んでほしい1冊です。


世界各国のコンペに勝利しており、いまや日本を代表する建築家のひとりとなった藤本壮介さん。

藤本さんがどのようなコンセプトで建築を設計しているのか、実際の建築がどのような空間を持つのかを知ることができます。

書き下ろしではなく、1998年から2009年の建築雑誌への寄稿をまとめたものなので、建築思想が形成されていく様子をプロットしている1冊と見なすことができます。



2019年に平成から令和に元号が変わり、歴史的な区切りがついたことで、平成の建築史が記されました。

建築家の内藤廣さんへのインタビュー形式で 、PART1「災害・事件・社会」編、PART2「建築デザイン」編に分けて各トピックが語られます。

建物の安全性をあらためて考える契機になった「耐震偽装事件」、オリンピックで世間をにぎわせた「新国立競技場問題」など、平成の建築シーンにおける主要な出来事がわかりやすくまとめられています。

テクノロジーはもちろんのこと、制度の変遷が多かった平成の建築業界を、歴史的に俯瞰するために最適な1冊です。



切っても切れない「建築家」と「メディア」の関係性について書かれています。

著者は、アーキテクチャーフォトを運営している後藤連平さん。

  • 自分らしい「建築家」とは?どうやってその「建築家」をデザインすればいいか?
  • これからの建築設計事務所に必要なメディアスキルとは?

本書で語られるこの2つのテーマに対する考察は、ウェブサイトだけではなく、多岐にわたる情報発信の場(メディア)を戦略的に利用するために役立ちます。

独立して建築設計をナリワイにしたい方にとっては必読の1冊です。




創造系不動産の高橋寿太郎さんによる、経営理念・ブランドコンセプト【建築と不動産のあいだを追及する】の実践の記録です。

建物をつくるときには6つのフェーズがあります。

  • Vision(ビジョン)
  • Finance(ファイナンス)
  • Realestate(不動産)
  • Design(設計デザイン)
  • Construction(施工)
  • Management(マネジメント)

従来の建物づくりでは分断されていた、不動産(VFR)と建築(DCM)の領域を横断する「建築不動産フロー」の有用性が示されています。

不動産の価値を最大限引き出すことで顧客の利益を創造しようという考え方を学べる1冊です。


一般的な職名ではない「不動産プランナー」は、著者の岸本千佳さんが自ら名乗っている肩書きです。

実際の建物だけでなく、ブランディング・運営法(マネジメント)を含めて、「不動産をデザインすること」が不動産プランナーの職能です。

不動産の有効活用には、むしろソフト面のほうが重要であるのではないかという気づきを得られます。

建築を学んではいるものの自分の行き先が見えないという方は、この本を読むことで視野を広げられるかもしれません。

おすすめの建築本【上級編】

建築についての深い知識を得たい方に手にとってほしい本を紹介しています。

何度も読むことで本当の理解を得られる、「読みごたえのある建築の本」がテーマです。

次のような建築の本が中心となっています。

  • 世界的な名著
  • SD選書の本(鹿島出版会)
  • 建築の哲学・論考をまとめた理論書